絞り染めについて

布を括って模様を表す

絞りは原則として、布を染液に浸して染める、〝浸染〟によって彩色される技法です。ゆえのその模様は、染めずに白く残すことで表現されるのです。いかに染めない部分に染液をしみ込ませず美しく仕上げるかが重要でした。
その方法として、絞りは布を糸で括って防染するといわれますが、実際の技法上、もちろん布を糸で括って縛り付けるだけでは、とうてい高度な表現などできません。そこで、精巧かつ熟練の手わざが編み出され、現在に受け継がれてきたのです。
絞りには、色を挿したりなぞっただけでは表せない、布の内を貫き通った色彩の深みと奥行き、そして圧倒的な迫力が感じられます。

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括り糸を解き放ち模様を呼び起こす

白目

白く残して防染したい部分を糸で括って仕上げた〝白目〟といわれる状態。職人の卓越した手わざにより、強く堅く括った糸に布が覆われ、染液の浸透も許しません。布の上に施す筆による描写でもなく、刷毛による色挿しでもない。〝染めない〟点に全力を傾注する表現は絞りのほかありません。

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左から手疋田、手一目、針一目の白目の状態。

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針一目の線により波涛を、手疋田の面で広がる水紋を表現。

 

解き湯のし

精魂込めた白目の生地。数年がかりで10数万粒以上も、指先で1粒ずつ糸括りする技法もあります。その糸をほどくのが〝糸解き〟といわれる工程で、布を勢いよく引っ張るように括った糸を布から外します。力仕事ですが、布を破らないよう慎重に加減する技術も必要です。最後に〝湯のし〟で布の表面を伸ばし整えて完成です。

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糸を解いた瞬間の様子。

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下・解き湯のしした上の作品。

 

 


京鹿の子絞りの基本工程

京鹿の子絞りは、最初の下絵の付け方から最後の仕上げまで、どの技法でも制作の流れは同じ。
各工程に専門の職人が携わり、分業で仕事が進められます。それが京都の絞りの特徴でもあります。

1. 下絵

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左・布に青花で付けられた下絵。これが模様の輪郭になります。
右・布の上に型紙を置き、青花で下絵を刷り込んでいきます。

2. 糸入れ

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左・下絵の輪郭をなぞりながら糸を縫って糸入れされた布。
右・下絵の輪郭に沿って、間隔を揃えて糸を縫っていきます。

3. 括り(絞り)

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糸入れした布をぎゅっと寄せて筒状にし、根元から先端へ糸を巻き上げていく括り(絞り)の工程。
ここの技法で模様の表現が決まる大切な工程です。

4. 白目

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糸で布を括って完全に仕上げたこの状態を白目と呼びます。括り始めから白目まで、着物でが1年以上かかる技法もあります。

5. 染め

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絞りは、刷毛で引き染めにせず、白目の布を染液にどっぷり浸して染める方法です。染液をしみ込ませないよう、いかに防染するかが大事です。

6. 糸解き(仕上げ)

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糸解きされた状態です。括った糸が解かれ、防染された部分がくっきり白く残っています。染めたあと、括っていた糸を切ってほどき、縮まった布を伸ばす工程です。

 

 


片山文三郎商店で取り扱っている主な絞り

唄絞り(ばいしぼり)

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糸できゅっと絞ったその形が貝に似ていることから貝絞り(唄絞り)と呼ばれています。生地に糸入れをし引き締めた後巻き上げていく方法と、糸入れをせずに生地に糸を巻きつけていく方法があります。

突出し絞り(つきだししぼり)

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生地の根本だけを糸で括る技法です。図柄が小鹿の斑点に似ていることと、糸を絞ってできる凹凸、突出しからその名がつけられました

杢絞り(もくしぼり)

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下絵にそって糸で縫い、その糸を引き締めて染まらない部分を柄として染めだす技法です。染め上がりが樹木の杢目に似ていることから、杢目絞りと呼ばれます。

手筋絞り(てすじしぼり)

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下絵がないのでできあがりは、職人のイメージでつくられています。絞り手の熟練した技によって、布を細かくたたんで縦筋をとります。

三浦絞り(みうらしぼり)

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染め上がりの小さな点模様が千鳥のような模様に見えることが特徴です。絞る人の力加減が模様となって表現されるような趣が味わい深い技法です。

疋田絞り(ひったしぼり)

小鹿の背の斑点に似ていることからよばれる鹿の子模様を表現する絞りです。数ある技法の中でも疋田絞りの表現は、江戸時代以来もっとも華麗さを誇り、それゆえ疋田絞りを代表技法とする京都の絞り産地で作られる絞り染を総称して「京鹿の子絞り」と呼ばれています。